新宿区福祉部
部長 布施 一郎 殿
新宿区学童保育連絡協議会
会長 松永 聡美
平成17年3月3日
要 望 書
貴職におかれましては、日頃から新宿区の学童保育に対し、格段のご配慮をいただき、誠にありがとうございます。
さて、私たち新宿区学童保育連絡協議会は、毎月数回、学童クラブ児童の保護者と会合を持ち、各種の意見交換を行っております。その中で挙げられた、新宿区 の学童クラブ事業に関するいくつかの問題点を、この度、要望としてまとめさせていただきました。以下をご一読の上、部内でご検討、ご対処いただけますよ う、お願い申し上げます。
記
この度は特に、学童クラブ児童の出欠に関して要望させていただきたいと思っています。先ずこの用件の背景について説明させてください。
この冬休み期間中、西新宿学童クラブでこんなことが起きました。
冬休み中のある土曜日、学童児Aくんがお弁当を持って学童クラブへ行ったところ、指導員が「今日は学童クラブの利用は誰もいないはずだよ」とAくんへ言い ました。Aくんの保護者は事前に冬休みの出席予定を提出していたのですが、指導員の記載ミスでその日は出席なしとされていたのです。
指導員にそう言われたAくんは、それならば一般として遊べると考ました。Aくんはそのまま家へ戻り、お弁当をおいて、カードゲームなどを持ってこども館に戻り、その日は一日中、お昼ごはんも食べずに一般として遊んだそうです。
家に帰ってこどもとの会話に変なところを感じた保護者が問いただしたところ、このような事実が分かり、保護者はこども館へ連絡しました。その日のうちに、申し送りでミスをした指導員から電話があり、ミスがあったことを認め、この件について保護者に謝罪しました。
学童保育連絡協議会の運営委員会でこの話が報告されると、参加の保護者の方々からいくつもの意見が出され、活発な議論になりました。その議論の中で、西新宿学童クラブに限らず、区内の学童クラブ一般についても言える、いくつかのことが明らかになりました。
そこで、協議会ではこの件をより深い議論のテーマとするため、各学童クラブ父母会と各学童クラブへアンケートを実施しました。
そのアンケートを基に、保護者同士でさらに議論が行われた結果から、いくつかの要望をさせていただきます。
(出欠の確認方法)
まず、登館の確認方法や出欠の記録方法に、区内で統一したものがないことがわかりました。
多くの館では台帳に記録し、登館を確認した時点でそれにチェックをする方法を取っているようですが、児童館の利用者カードを別ボックスにして、それを必要に応じて見ている、児童の氏名を書いたマグネットを使っている、などもありました。
このようなノウハウは各館で独自に引き継がれるものではなく、指導員同士の交流や会議を通じて共有されるべきものではないでしょうか。また、西新宿こども館で起きたような引継ぎミスは、同様にノウハウの交流を通じてシステムの改善がなされるべきだと考えます。
さらに、このような業務に対して、区としての適切な指導やガイドラインの提示があるべきではないでしょうか。
* 学童クラブにおける児童の出欠の確認、記録、申し送り方法について、区内全館での指導員同士のノウハウ交換を通じた改善に配慮してください。
* 学童クラブにおける児童の出欠の確認、記録、申し送り方法について、区としてのガイドラインの提示を検討してください。
(登館遅れへの対応)
通常月における学校から、あるいは、長期休暇中における自宅から、学童クラブへの登館時間には、ある程度の見極めができると思います。しかし、児童が来る べき時間に登館しなかった場合の指導員の対応にも、各館で差があることが分かりました。ある館には、30分待って来なければ、先ず学校に連絡、近所の公園 などに探しに行ってから保護者に連絡する、などのように、はっきりとした取り決めがありました。また、特に取り決めがなく、実際には2時間くらい経ってか らようやく保護者への連絡があった、という館もあったそうです。
このような議論を通じて、 登館遅れ時の対応についての明確な説明を受けていな かったという保護者が多くいる、ということが分かりました。また、児童の登館遅れについては、学校との距離や各児童の性質など、個別の問題も考慮しなけれ ばならないことも話題になりました。ですから区内全域に通用するガイドラインを作成する必要もあると考えますが、まず各館で保護者と十分話し合って、明確 な共通理解を持つことが重要なのではないでしょうか。
* 学童クラブ児童の登館遅れ時の対応について、各館の状況に応じた対応方法を、指導員と保護者が十分に話し合うことに配慮してください。
(出欠の確実な把握・問題意識)
児童の登館遅れについては、単なる寄り道から意識的なさぼりまで、各種の理由があると思います。
実際に、友達の家に遊びに行きたいがために学童クラブへ行かなかった、あるいは寄り道が長引いて1時間ほど遅くなった、などの事例がアンケートで報告され ています。このようなケースについては、先ず各保護者がきちんと指導しなくてはならないことを十分認識する必要がある、という意見が何人もの保護者から出 されました。また、「寄り道もこどもの成長にとって大切。それゆえ指導員には、叱りながらもあたたかく見守る、心の奥行きが必要」との意見もありました。
その一方で問題になったのが、何らかの理由で児童が登館しなかった、あるいは大幅に遅れているにも関わらず、指導員から保護者への連絡がなく、なんらの対応も行われなかったというケースが、複数の館から報告されているということです。
これは、前述のように児童の出欠を確実に把握するノウハウが欠けている館がある、ということが原因かもしれません。
さらに保護者からの問い合わせに対し、指導員にそれほどの重大性の認識も危機感も感じられないケースもありました。
保護者が子どもに伝えたいことがあって児童館へ連絡したところ、「今日は来ていません」と平気で言われた。児童館から子どもが来ないと連絡があったので 「探しに行って下さい」とお願いすると「今は人手がないので…」と言われた。こどもが2日間もサボって行かなかったのに、学童クラブからは全く連絡が なかった、などの事例がありました。
学童クラブを利用する保護者の第一の心配は、子どもの安全です。保護者は、子どもが学童クラブで信頼できる 大人の保護下にいる、ということで安心していられるのです。昨今の情勢を考えると、子どもが登館しないのは、いつも寄り道やさぼりで遅れているのだと考え るわけには行きません。寄り道かと思ったら、実際には事件に巻き込まれていた、ということであっては決してならないのです。
学童クラブ児の出欠を確実に把握できないことが常態化している、あるいは、指導員が児童が登館しないことに問題意識・危機意識が低い、ということでは保護者が安心できないことは言うまでもありません。
* 指導員が学童クラブ児の出欠を確実に把握できるよう、配慮してください。
* 学童クラブ児が確実に登館することへの、指導員の問題意識・危機意識の向上に配慮してください。
* 学童クラブは、児童の登下館時の安全についても、配慮しなければならない、ということに認識を新たにしてください。
(子どもの心を感じ取る能力)
西新宿学童クラブのA君のケースで、もうひとつ議論になったのは、「今日は学童クラブはないよ」と言われたときのA君の心の動きを、指導員が何故察してあ げることができなかったのか、ということです。また、土曜日に通常A君は登館しています。経験のある指導員だったら、その事情を知っていれば「何か変だ な」と感じて、「今日はお母さんか誰かおうちにいるの」などの声かけをし、臨機応変に学童クラブとしての受け入れをしてくれたのではないでしょうか。A君 は一日中こども館にいたわけですから、それはいつ言ってもよかったわけです。
「子どもはうそをつくこともあるし、都合の悪いことには口をつぐ む。それにきちんと説明する能力がない場合もある」、「だからこそ指導員は言葉にならない子どもの心を察知し、硬軟使い分けて対応する能力が必要」と、学 童クラブを長年利用しているある保護者が意見を述べてくれました。
それ故、前記の寄り道に対する態度のことも含めて、児童館・学童クラブの指導 員というのは高度な専門職で、経験と絶え間ない改善意欲が欠かせない立派な仕事だと思います。 一方、A君の事件が昨年民間業務委託されたばかりの西新宿 こども館で起きたということは、内在する問題点が表面化したことだとも思います。
* 指導員という職業の「子どもの心を感じ取る能力」に対して、各指導員が認識を新たにし、さらに研鑽に励むことに配慮してください。
* 公設公営館、民間業務委託館に関わらず、指導員が「子どもの心を感じ取る能力」を等しく持てるように、より一層配慮してください。
以下、昨年度同様、引き続き要望申し上げます。
(安全の確保)
* 子どもの安全確保のため、学校や教育委員会、警察等との連携に十分配慮してください。
(入所基準)
* 本年度も「一人の待機児も出さない」との基本姿勢を十分貫いてください。
* 入所に関する近隣調整は、本人及び保護者の意向を十分尊重して決定してください。
(民間業務委託)
* 児童館および学童クラブの民間業務委託については、保育内容の低下とならいないことに十分配慮してください。
* 民間業務委託児童館および学童クラブの新規開始については、当該の保護者や父母会、近隣住民への十分な説明と納得を前提に進めてください。
* 特に本年4月から業務開始が予定されている、「戸塚第一小学校地区民間学童クラブ」についても、当該の保護者や近隣の学童クラブ利用者、およびその父母会への十分な説明と納得を前提に進めてください。
* 民間業務委託を実施している児童館および学童クラブについては、評価基準と評価方法を明らかにし、その結果を公表してください。
(利用時間)
* 学童クラブの利用時間を、区内すべて同一の内容としてください。
* 土曜日、学校の休日、および長期休暇中の学童クラブの開始時間を、8時15分にしてください。
(お弁当)
* 学童クラブ児であった新4年生は、春休み期間中、お弁当の持参や受入れ時間を、学童クラブに準じた扱いにしてください。
* 長期休暇中、一般児童が児童館でお弁当を食べることを認めていることを、各館の指導員へ周知徹底させてください。
(学童クラブ事業予算)
* 学童保育に関する施策を充実し、必要な予算を増額してください。
* 学童クラブのおやつ代と行事費を増額してください。
* 学童クラブが加入している保険について、対象時間や対象場所等をひろげることを検討してください。
(おやつのメニュー)
* おやつのメニューに関しては、父母会や保護者の意見を聞き、手作りおやつを増やすなど、子どもたちの健やかな成長に十分配慮してください。
(障害児の利用)
* 障害児童の学童クラブ利用学年については、柔軟に対応してください。
* 障害児童が学童クラブを利用するときは、専任の指導員を配置することを制度化してください。
* 障害児童の学童クラブ利用枠については、希望者全員が利用できるようにしてください。
* 障害児学級を開設している小学校の、近隣の学童クラブでは、障害児の希望者全員が入所できるようにしてください。
* 障害児童の、学童クラブを含む児童館の利用にあたっては、保護者と十分話し合ってください。
(以上)