児童館・学童クラブ事業のあり方に関する要望
平成20年9月1日
新宿区学童保育連絡協議会
会長 内田 優子
いつも子どもたちの健全育成事業にご努力いただきありがとうございます。
学童クラブ・児童館の事業で、最初に民間業務委託された館は、次年度へ向けて新たな選定作業・プレゼンテーションをへて新しい委託先の選任が行われます。同時に次年度から指定管理者制度という新たな制度が導入されようとしている節目を迎えます。
そのような時期にあたり以下の要望を提出いたします。
ご検討いただき、文書で回答をいただきますようお願い申し上げます。
①民間委託館で次々に指導員がやめています。予算措置等も含めてきちんとした事態の解決への方策を出してください。あわせて委託館の各館ごとに、これまで何人の指導員がどのような期間業務についていたか(何年でやめられたか)などの実態を調査してください。
説 明 平成10年制定の「学童クラブ指導要領」の中で、「一 暖かい環境づくり クラブは、子どもにとって、下校時の一定時間、また長期休業中においては 日中の大半の時間の生活の拠点である。したがって、できるだけ暖かい雰囲気をつくるよう配慮し、子どもが安心して落ちつける環境づくりをする。また、どの 子どもに対しても常に公平な態度で接することを心がけ、受容的な態度で子どもの悩みや欲求を聞くようにする。以下略」 と述べられています。
本当にその通りだと思います。しかし、民間委託館の多くでは指導員が次々にやめ、落ち着ける環境が維持されていないのです。子どもたちが安心できる環境づくりに行政は責任を持ってほしいです。
2年前、待機児を出しかねないポイントの見直しに対する陳情について話し合われた区議会の福祉健康委員会で「質の維持は行政の責任」とのまとめの発言がありました。
指 導員が子どもたちの3年間を継続指導するという最低限の質の維持が、民間委託館ではできていないところがあることを理解してください。年度の途中で指導員 がほとんどやめてしまう、3年間子どもの様子を見続けてくれる指導員はほとんどいないなど、公設公営ではありえないことが民間業務委託では起こっていま す。1年生に入り不安な放課後を過ごしている学童児が、指導員たちになつきようやく落ち着いて学童クラブでの生活になれてきたとたんに、そのしたっていた 指導員の方たちが次々にやめていったとしたら、どんな気持ちでしょう。みすてられたような気持ちを持ってしまう子もいると思います。
4年前からの業務委託館では開設時の先生が現在一人も残っていないということの異常さをもっと考えてほしいです。何人の指導員が入れ替わったかなどを調べてほしいとしているのはそのためです。
予 算措置等も含めてきちんとした事態の解決への方策を出してください。懇談会の中で、前課長は委託費が4年間変わらないのはどうかなど検討していると言われ ました。もっと早く正常化のための手を打ってください。よくしてくれる指導員がやめなくてすむよう、子どもたち、そして保護者は心から願っています。
②公設公営、民間業務委託館、民営を問わず切磋琢磨するための方法と評価基準を具体化してください。新しく始まる指定管理者制度下で、現行のソーシャルワーカーのような区とのパイプになり、相談業務を受け持つ区の職員の配置を検討し、実現してください。
説 明 すでに民間業務委託が始まって4年以上たちます。区では切磋琢磨しつつサービスの拡大をめざすと言われてきました。しかし、切磋琢磨の質的な裏づけに ついては、「区職員の実施する児童館・学童クラブと切磋琢磨していくには、お互いの評価を共有するツールがいりますが、これまでは、質の面で両者を比較す るツールがありませんでした。今年度から、委託館だけでなく、それ以外の館でも、利用者アンケートを実施する予定です。この結果を分析し今後のお互いに高 めあう運営に結び付けていきたいと考えています。」と1年前の懇談会でやっと述べられました。
民間委託以前から質の低下への不安を連協は指摘してきましたが、あまりにも対応が遅いのではないでしょうか。
西 新宿では開始早々全ての指導員が入れ替わっていたり、スタートからごたごたが続きました。父母会や連協からの指摘でやっと、館長・SW・委託の指導員との 連絡会が始まりました。他の問題でも同様で父母達が子どもたちの居場所の維持を求めて行動しない限りアクションを起こさず、業者からのヒアリングにもとづ いて「現在はうまく行っていると聞いています」と言われても、実際の状態とは違うのです。質が維持できていません。子どもたちの身近にいて声を上げている 父母の気持ちを大事にしてほしいです。
私達は子どもたちの居場所を守りたいのです。子どもたちの居場所を守るためには、現状をどう認識し、チェッ クするかが必要です。不安定さをかかえている民間委託館には、現行のソーシャルワーカーのような区とのパイプになり、相談業務を受け持つ区の職員の配置が ぜひとも必要です。「年度の終わりに評価」しても、居場所機能不足のまま過ぎ去った1年間は取り戻せないのです。
また民間委託館だけでなく、公設公営館でも質の維持のためのチェックと改善が必要だと私たちは感じています。
平成10年制定の「学童クラブ指導要領」の中で、四 社会的適応性を高めるための援助 「・・・・・子どもたちの相互の関係に十分注意を払い、話し合いや集団遊びを通して信頼関係を築いていく必要がある。」と述べられています。
この集団遊びとは、ドッジボール程度ではないと考えます。指導要領が作られた10年前には、Sケンも含めた文字通り集団で組織的に遊ぶ集団遊びが普通に見られました。指導員の力量や得意不得意によってあまり行なわれていない館も増えているように思われます。
③来年度から導入予定の「指定管理者制度」について説明資料を作成してください。そして、公営、民間委託、民間を問わず学童クラブのすべての保護者、保育園の保護者に渡るようにしてください。その上で制度変更に関する勉強会を早急に各所で行って頂くことを要望します。
説 明 今年3月の懇談会において、「指定管理者制度」について行政と学童クラブ父母とで十分理解を深めた上で導入していこうとの約束いただいたはずです。あ れから6ヶ月が経過しましたが、保護者にはその後の進捗状況についての説明がありません。説明資料も全館に配布されていません。このまま保護者がきちんと した情報を持つ事ができないまま、なし崩し的に行政主体で「指定管理者制度」が導入されていくことには納得できません。②でふれたソーシャルワーカーの配 置も含めて、あり方の変更は必要です。この新システムに学童児が振り回される事にならないようにしてください。今後、学童を利用する可能性のある地域の人 へも説明がないのは問題です。たとえば、つい先週に信濃町保育園の保護者でこのことを「えーっ?!全然知らなかった」という人がいました。
選定委員会が発足する前に、行政がどこまで「指定管理者制度」に関して理解を深めた上で導入しようとしているのかを、私たち学童児を預ける保護者は知りたいのです。「指定管理者制度」導入に関して、学童クラブ利用者みんなが納得のできる説明を各所でして頂きたいです。
子 育てが難しい時代、次世代を育てていくためにもさまざまな方策が必要になっています。共働きも増え、シングルで働きながら子育てをしている保護者も増えて います。保護者が働いている家庭の児童のための生活の場としての学童クラブ、地域の子どもたちの居場所としての児童館の役割はますます重要になっていま す。子どもの行政が福祉部から独立し子ども家庭部となったのにあわせて、行政のプロとしての取り組みが強化されるよう望みます。
*以上が新宿区学童保育連絡協議会としての要望です。懇談会当日は各館から父母が参加しますので、これ以外の意見や要望も出ることが考えられます。それらの意見についてもできるだけお答えいただきますよう、あらかじめお願いしておきます。